当社代表の塩沢均による連載コラムです。

社長の塩沢です。
ベイクックについてはもちろん、稲作や長野米のお話、その時々の話題や情報など私なりに感じたことをお届けしていきたいと思います。どうぞお付き合いください。
このところ「おこめ券」が世間を騒がせています。この業界にいると当たり前の券なのですが、ご存じない方や知っているけれど使ったことがないという方も結構いらっしゃるようなので、少し説明させていただきます。
現在市中で流通している「おこめ券」は、全農(全国農業協同組合連合会)が発行している「おこめギフト券」と全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)が発行している「おこめ券」の2種類があります。どちらも1枚500円で、440円のお米と引き換えることができます。ビール券等と同じ仕組みです。使える(コメを引き換えることができる)店は、全国のお米屋さんをはじめ、コメを扱っているスーパーや百貨店等多岐にわたります。
コメの生産が盛んな地域ではコメをギフトにすることはあまりないかもしれませんが、都市部や生産の少ない地域(沖縄などが典型です)では、意外とコメは贈答品になっていたりもします。
このところ情報番組等で「おこめ券」が叩かれているのを目にすることがあります。曰く、何で今どき紙の券なのか(電子クーポンなら給付も簡単)とか、手数料を取り過ぎだとか。
贈答(券)市場の中で活用されてきた「おこめ券」ですから、昨今の物価高対策ツールとしてはそぐわない面もあります。「このご時勢、なぜ電子決済じゃないの?」といわれても、贈答品ですから形に残らないと様になりませんし、「手数料が高すぎるのでは?」という声ももっともですが、そもそも売上規模がそれほど大きくないコメの贈答マーケットですから、薄利多売というわけにいかない面もあるのです。
どうやら今回使われる「おこめ券」は、使用期限のある、現在流通中のものとは別の券を新たに印刷して使用するようなので、「タンスの肥やし」になる心配はなさそうでホッとしています。
今年の新米はその価格の高さから売れ行きが非常に悪いです。高騰は人為的なものであり、そんな原料玄米に手を出してしまった我々流通業者にも責任はあります。ただコメは嗜好品と異なり、「今年は高いから仕入れるのは止めよう」というわけにはいかない、ライフライン的な面があり、だからこそ関係者一同困惑してしまっています。多分この先市況は下がっていくでしょうが、秋に高い価格で市場に流れ込んだ原料玄米は行き所がなく、安い原料が登場しようにも入り込む余地がない、というのが現状です。「おこめ券」を始めとした物価高対策が新米消費促進の糸口になってくれると良いなと思っています。