社長コラム29 豊作なのに、なぜ米価は高いまま?“適正価格”とは

精米 玄米 社長コラム

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当社代表の塩沢均による連載コラムです。

Shiozawa@2x-1

社長の塩沢です。
ベイクックについてはもちろん、稲作や長野米のお話、その時々の話題や情報など私なりに感じたことをお届けしていきたいと思います。どうぞお付き合いください。

 

令和7年産のコメの状況が徐々に明らかになってきました。今年から始まった「作況単収指数」は全国平均が102ということで、収穫量は715.3万t、昨年比で63.4万t増加するといわれています。(9/25現在、農水省発表)

大豊作です。それなのになぜ新米の価格は高いままなのか?それは米を集める業者が集荷合戦を繰り広げた結果、市場が受け容れる価格を遥かに超えた価格で売買されたからというのが原因の一つになっています。だから豊作なのに、コメはたくさんあるのに、価格が高止まりをしているわけです。

我々精米卸も、今の価格が高すぎて需要の減退に結び付いていることは骨身に染みて感じています。野菜や果樹のように日持ちのしないものなら思い切った価格で処分してしまうということもありますが、コメは保存性が高いだけに長期に渡って価格に影響してしまっています。

同業者の方と話をしていると、利益を犠牲にしてでも売らないといけない局面が早晩やってくる、といった声をよく聞きます。皆さん高い在庫を抱えているからです。確かにそうだと思う反面、数年前の食品の値上げラッシュの折に苦労して経費上昇分を訴求したコメの値上げのプロセスを思い出すと、単純にディスカウントはできないなという思いもよぎります。

そもそも米価は原則として秋の相対価格一発で確定というスタイルであり、小売価格に関しては「売れる売価」が優先される風潮でありました。そうした中、業界を挙げて経費の上昇を訴え、特に我々は「卸」といいながら原料を仕入れ加工して販売する「メーカー」でもあるわけで、この部分を含めて「再生産」、「継続」ができる経費を認めていただくことで、秋の時期以外でも価格の変動の交渉をさせてもらえるようになったのがつい数年前の話でした。このことは、価格の変動に主体的に関われるという意味でも、精米卸の業務のコストがどうなっているかを知っていただくという意味でもとても重要でした。だから現在の「○○○円ならば売れる」的な話にはついつい躊躇してしまうのです。

いずれにせよ、そういった我々が必要としている経費を認めていただくには、常にそれを削減する努力と、値下げができるとなったら値上げのときと同じスピード感で行えなければいけません。そうすることで価格に対する信頼性も、少しは向上するのではないかと思うのです。

すぐさま、劇的に、米価が改善することは難しいかもしれませんが、我々もお求めやすい価格になるようできることは手を尽くしていきたいと考えています。どうか今年の新米も温かい目で見守って下さい。